第104章 シュワシュワ
「僕だって同じです」
櫻井が俺の服をきゅっと掴む。
しかも、俺より少し背が高いはずなのに上目遣いになっていて。
なんだこれ、可愛すぎないか?
「先輩?」
今度は首を傾げてくるし…。
俺の理性、どこまで試されるんだよ。
心の中で葛藤していると、玄関のドアからカリカリと音がしてきた。
ショウが外を気にしているんだろうな。
「ショウちゃんですかね?」
「うん、そうだと思う」
…母ちゃん、ではないはず。
「ふふっ。可愛いですね」
「俺たちの匂いがまだしてるからかな」
櫻井がいるってわかっているんだろう。
「ショウちゃん、先輩が帰ってくるのを待ってるんですね」
…えっ?
待て待て待て。
違うよ?
きっと違うよ?
櫻井に会いたがってるんだと思うよ?
ショウもさ、気持ちはよくわかるよ?
櫻井のこと、気に入ってたもんな。
わかるんだけど…ごめんな、ショウ。
俺は玄関を見ながら心の中で謝った。
「先輩」
「ん?」
「ショウちゃんが可愛そうだから、帰ってあげてください」
「えっ?」
「それに…」
「それに?」
「先輩、玄関のほうばかり見てるから…」
ん?
ちょっと拗ねてる?
あぁ、もう。
ヤキモチだろ、それ。