第104章 シュワシュワ
「じゃあ、明日学校で」
「はい」
「帰り気をつけて」
「ありがとうございます。ショウちゃんもまたね」
名残惜しさを感じながらやり取りしていると、ガチャッと玄関のドアが開く音がした。
「外で声がすると思ったら…」
「母さん」
「あらっ、お友達?」
「こんばんは。初めまして。後輩の櫻井翔です」
「こんばんは。智の母です。まぁ、翔くんっていうのね。目がクリッとしてて可愛らしい。」
母さんがニコニコしながら俺を見る。
…ちょっとイヤな予感がするんだけど。
それはやっぱり的中して。
口許を隠しながら「ふふっ、だから“ショウ”なのね」なんて小声で囁いてきた。
ウチの母さんはおっとりしているけど、意外と勘がいい。
誤魔化してももうだめだから、俺も母さんに「そうだよ」って囁き返した。
「ショウは私が部屋に連れて行くわね。今度またゆっくり遊びに来て」
母さんが俺の手からリードを取り、ショウを連れて家の中に入っていく。
ドアが閉まるまで、ショウは俺たち…っていうか、櫻井のことを見てたけど。
ありがとう、母さん!
「駅まで送るよ」
思いがけない母さんのナイスアシストで、少しでも一緒にいる時間ができたことに胸が高鳴る。
「いいんですか…?」
ちょっと遠慮がちに聞いてきたから
「俺は翔くんともう少し一緒にいたいんだけどな」
自然と言葉にしていた。