第104章 シュワシュワ
「僕はまだ続けてても良かったのに」
櫻井が俺の右隣に座り直しながら、ふふっと笑う。
「ワンコちゃん…ショウちゃん?は、大野先輩に随分と可愛がられてるんですね」
「あぁ、うん。姉ちゃんが飼い始めたんだけどね。可愛いだろ、コイツ」
「はい。とっても」
「良かったな、ショウ」
ショウを撫でるとクゥンと鳴いた。
「…羨ましいな」
櫻井が呟く。
「えっ?」
「いや、その…気にしないでください」
語尾が小さくなってるし。
気にしないでって言われても、気になるし。
羨ましいって何だ?
ヤキモチ的なもの…なのか?
それなら俺だってそうだったし。
さっきとは違うドキドキが胸いっぱいに広がっていく。
隣にいる櫻井をチラッと見ると、体育座りで俯き加減になっていた。
そして耳が真っ赤だ。
「櫻井?」
心配になって櫻井の顔を覗きこもうとしたんだけど。
俺の動きを察したのか、櫻井がお尻をずらしながら俺の右肩に背を向けるように移動した。
もしかして照れてる?
いや、ちょっと待って。
右肩に櫻井が凭れかかってないか…?
右側からじんわりと熱が伝わってくる。
俺は戸惑いながら、ショウの体を数回撫でた。