第104章 シュワシュワ
ドキドキしながらも、俺の視線は櫻井の左頬をロックオンしている。
このまま吸い寄せられるように、ちゅっ。てしてみるか?
イヤイヤ、幾らなんでもそれはダメだろう。
男の俺から頬にちゅっ。なんてされたら、櫻井だって気を悪くするはず。
そして、俺とは顔をあわせるのも口を聞くのもイヤになるかもしれない。
だったら、今はこの距離感だけで満足としよう。
うん、それでいいんだ。
脳内で色んな葛藤をしていると、フワッと櫻井のシャンプーのいい香りがしてきた。
ハッとして意識を向けると、ショウが舌を出して櫻井に顔を近づけている。
あっ。
俺が気をそらしていた隙に、なんてことを!
「あはは。ワンコちゃん、くすぐったいから~」
なんてこった。
ショウが櫻井の顔をペロペロと…。
「ちょっ、こらっ」
櫻井からショウを遠ざけようとしても、ショウは櫻井を舐め回すのを止めない。
…羨ましいな、オイ。
…特権だな、オイ。
俺にはできないことだから、心の中でつい本音が出てしまう。
それに…
ショウに顔を舐めくり回されてるのにもかかわらず、嬉しそうにしてる櫻井にもちょっと面白くなくて。
「ほら、ショウ、もうおしまい!」
今度こそ俺はショウの体を引き寄せて、櫻井から遠ざけた。