第104章 シュワシュワ
聞き覚えのある声の主が、俺の前にしゃがみこむ。
その人、櫻井翔は俺の高校の後輩。
「大野先輩、ここで何をしてるんですか?」
「俺は、コイツと散歩。なっ?」
腕の中のショウの前足をあげながら答えた。
「うっわ、めっちゃ可愛いじゃないですか!」
櫻井が興奮ぎみで、俺のほうに身を乗り出す。
視線はもちろんショウにあるのはわかってはいるんだけど…
ショウに近づくってことは、自然と俺との距離も近くなるわけで。
「ちょ、ちょっと近いって…」
慌ててそう言っても相手はそんなことは気にしてないらしく、俺の腕の中にいるショウを撫で始めた。
「よーし、よし、よし。ホント、可愛いなぁ」
ショウもおとなしく撫でられている。
…ってかさ、ショウ、お前…ウットリしてないか?
俺はというと、櫻井との距離が近くて気がきじゃないっていうのに。
だってさ、俺がちょっと身を乗り出したら、櫻井の頬っぺたにちゅっ。てできちゃいそうなんだから。