第18章 サクラカオル
(Oサイド)
サトコとして
翔くんと会うたびに
早く打ち明けなきゃと
思っていたけど
嫌われるのが怖くて
なかなか言えなかった。
だから
翔くんから連絡がきても
忙しいからって嘘ついて
なるべく会わないようにした。
本当は毎日会いたいくらいなのに。
そんな時…
大学の片隅にいた翔くんと
目があって。
ドッキーン
バクバクバクバクバクバク…
心臓が飛び出るかと思った。
翔くんは何も言わずに
去ってしまった。
女のサトコではなく
男の智の姿。
嫌われた…
もう終わりなんだ…
そう思った。
翔くんのこと
追いかけられなかった。
…その時の
翔くんの真意も
知らずに…。
あれから3年。
俺はサラリーマンになり
毎日スーツを着て働いている。
サトコには…
3年間なっていない。
翔くんとも
あの日以来
会っていない。
だけど…
もうすぐ翔くんが
大学を卒業する。
もう一度だけ
もう一度だけでいいから
翔くんに会いたい。
初めて会った時と
同じこの桜の季節に
翔くんに会いたいんだ。
ふぅ…
深呼吸して
スマホをタップした。
「もしもし…翔くん…。」
『久しぶりだね。元気だった?』
「うん…グスッ。」
ダメだ…涙が出ちゃうよ。
ちゃんとお話しないといけないのに…。
「じょおぐん…。」
『ふふっ。なぁに?』
「あので、いぢど…あっでもらえる…?」
『いいよ。』
「ほんど…に?」
『うん。ずっとね、連絡待ってたよ。』
「えっ…なんで…グスッ…。」
『ほら、泣かないで。ねっ?いつ会う?』
「あじだ…グスッ、明日は…?」
『いいよ。』
「いいの?」
『いいよ。ほら、目が腫れちゃうよ。』
「うん…。泣き止むから…。」
その後
明日の確認をしあって
電話を切った。
翔くんの声は落ち着いていて
とても優しかった。