第103章 LOVE LOVE LOVE
(Sサイド)
昼休みになる時間が近づく。
僕たちはいつも、お弁当は教室で食べている。
だけど、智くんだって呼び出しがあったら無視はできないだろうし…。
そんな時。
急ぎではないけど、生徒会室に用事があったのを思い出した。
そこにいけば用事も済ませられるし、智くんと二人きりになれる…。
チャイムが鳴り、僕はキーホルダーをスクールバックに着けた。
そして、智くんを誘った。
智くんはすぐに、スクールバックのキーホルダーに気づいてくれた。
キーホルダーのことで色々聞きたかったけど、何だか照れ臭かったのと、早く教室から出たい気持ちがあった。
「早く、早く」
急かす僕に合わせて、智くんがお弁当を用意する。
「お待たせ。行こうか」
「うん」
智くんも席をたち、一緒に歩きはじめた。
だけど3歩くらい歩いたとこで僕は、ある思いが頭をよぎり、歩みを止めた。
「しょーくん?」
突然立ち止まった僕に気づいた智くんが、僕の顔をのぞき込む。
「やっぱり…いつも通りここで食べよ」
「えっ?あ、うん。しょーくんがそれでいいなら」
「うん。ごめんね」
僕たちは席に戻った。
もしも。
万が一僕が誰かに声をかけられたとしても、僕には好きな人がいるからって正直に伝えればいい。
智くんからもらったキーホルダーが僕に強い気持ちを持たせてくれたように思う。
もしも智くんが呼び出されたら…
それは本当はイヤだし、その相手の子の応援はしてあげられないけど…
そうなる前に、僕の気持ちを智くんに伝えたい。
「キーホルダーありがとう。すごく嬉しかった」
「それなら良かった。急にね、こんなの渡しちゃったからさ。ちょっと心配だったんだ」
「どうして?」
「だってさ…ハート、だし…」
「うん、どうしてハートなんだろうって思ったけど…」
「…イヤじゃなかった?」
「そんな、イヤだなんて全然…。それどころか、いつも呼ばれてるのと違ってたから、ドキドキした」
「『翔』って?」
「そうそう。『翔』って…」
はっ!
智くんからの『翔』呼び!
頭の中で『翔』ってリピートする。
授業の間だって、悶絶してて大変だったんだから!
顔がカァっと熱くなる。
うーっ、智くんめ!
今度こそ僕は、智くんの肩をペシッ!とした。