第103章 LOVE LOVE LOVE
(Oサイド)
しょーくんの手をつかんだまま教室に戻る。
廊下の時と同じように、まだガヤガヤと興奮冷めやらぬ状態だった。
先生が入ってきて日直から号令がかかると、教室内は徐々に落ち着きを取り戻していく。
だけど…
俺の気持ちは落ち着かないでいた。
はぁ…。
いざとなると、うまくいかないもんだよなぁ。
キーホルダーを渡す時、照れ隠しでぶっきらぼうな言い方になってたし。
せっかく勇気を出して発した言葉も、チャイムに遮られて。
いや、チャイムが悪いわけではないんだけど…。
しょーくんに渡したのは、白いプラ板で作ったキーホルダー。
ハートの形に赤字で『翔』って書いたもの。
そんなの突然渡されてさ。
しょーくん…変なふうに思ってないかなぁ。
今さらなんだけど。
なんて。
俺は後悔と不安で頭の中がいっぱいだった。
4時間目が終わり、昼休みに入る。
いつもお弁当は教室でしょーくんと食べている。
だけど今日は10分休みでさえ、呼び出しがあったりクラスや学年が入り交じっていてワイワイしていた。
しょーくんに「また昼休みに」って声をかけていたものの、どこに連れ出したらいいのか…。
「智くん、智くん!」
今日一番、しょーくんの明るい声がする。
「生徒会室に用事があるから行こっ」
しょーくんが手にしていたのは、いつものようにお弁当…じゃなくスクールバックだった。
そこにはちゃんと、俺が渡したキーホルダーが着けられている。
「着けてくれたんだね」
「うん。あっ、早く、早く」
「う、うん」
しょーくんに急かされながら、俺はスクールバックからお弁当を取り出した。
なんかね。
しょーくんが嬉しそうっていうか、はしゃいでいるっていうか…
そんなしょーくんを見ていたら、沈みかけてたテンションが上がってきた。
よし。
今度こそ、さっき途中までしか言えなかったことを伝えよう。