第103章 LOVE LOVE LOVE
(Sサイド)
智くんから受け取ったキーホルダー。
白いプラ板で作られているそれには、赤字で大きく『翔』って書いてある。
「智くん、これは…?」
智くんが「俺の、、」って話し始めたのと同時にチャイムが鳴ってしまった。
「「えっ…」」
思わず二人して天井を見てキョロキョロする動きがシンクロする。
再び顔を見合わせると、智くんがバツが悪そうにこめかみを擦った。
「マジかー、このタイミングでかー」
うん、うん、僕もそう思う。
だけど、チャイムが鳴ってしまったからには仕方がない。
「しょーくん、また昼休みに」
「うん」
智くんと一緒に男子トイレを出ると、廊下にはまだ10人ちょっといてガヤガヤ賑わっていた。
そういえば、さっきの呼び出しはどうなったんだろう。
気にはなりつつ、今度は智くんに連れられて足早に通り過ぎる。
席に着くまで僕は手をつかまれたままだったから、ドキドキで胸が張り裂けそうだった。
前には智くんがいる。
その智くんの背中を背景にしながら、キーホルダーを見つめた。
白に赤字のシンプルなキーホルダーは、手で軽く握れるほどの大きさ。
“バッグにでも付けといて”ってことは、プレゼントってことでいいのかな…?
どうしてハート型なのかな…?
“俺の、、”って何を言おうとしてたの…?
そして…
いつもは「しょーくん」って舌ったらずな呼び方なのにキーホルダーの『翔』の文字は力強くて。
「しょーくん」『翔』「しょーくん」『翔』
頭の中で何度も繰り返しては悶絶した。
授業中だから体を揺らしたり手足をバタバタできないのがもどかしい。
うーっ。
何とかしてよ、智くん。
智くんの背中をペシッとしたくなったけど、やっぱり授業中だし、理由を聞かれても恥ずかしいから我慢した。