第103章 LOVE LOVE LOVE
(Sサイド)
智くんにつかまれている手が熱い。
いや、手だけじゃなくて全身がドキドキしている。
「智くん…?」
どうして智くんは僕の手をつかんだのだろう。
離してほしくて“手”って言ってきたんじゃないの?
そう思いつつも、智くんに手をつかまれてるこの状況が嬉しくもある。
びっくりはしたけど…
好きな人にこうされてるんだから。
ずっとつかんだままでいてほしいな、なんて。
目頭がじわっとしてくる。
智くんを見ると、切なげな表情で僕を見つめていた。
そんな顔されたら、気持ちが溢れてきちゃうよ。
「智くん…?」
もう一度、呼んでみる。
「しょーくん」
「は、はいっ」
やだな、声が上ずっちゃったよ。
智くんもそれがおかしかったのか
「…んふふ」
って肩を揺らしていて。
空気が柔らかくなったのを感じた。
智くんは笑い上戸だから、しばらくクスクスしていた。
「そんなにおかしかった?」
「うん。おかしかったのもあるけど…可愛いなって」
「可愛くなんか…」
だって、男だよ?
「いや、可愛いよ…」
今の今までクスクス笑ってたのに、急に真顔で見つめられてドキッとした。
僕の手をつかんでいる智くんの手にもグッと力が入っている。
「だから、誰にも取られたくないんだよ…」
ボソボソッとだけど、僕の耳に届いた。
「えっ?」
“取られたくない”って僕と同じ…?
僕が戸惑っていると、智くんはもう片方の手でポケットをゴソゴソし始めて、何かを取り出した。
「コレやるから、バッグにでも付けといて」
智くんから渡されたのは、白いハートに名前が入っている手作りキーホルダーだった。