第103章 LOVE LOVE LOVE
(Oサイド)
男子トイレには俺たち以外、誰もいなかった。
薄暗いし、ロマンチックとはかけ離れた場所なんだけど…
しょーくんが俺を連れてきて、2人で一緒にいるっていうだけでも特別なものに思えた。
高校2年生。
ピチピチの17歳。
トクトク、トクトク…
鼓動が早い。
いくら若くったって、走ればそうなるけど…
この状況だし、走った後だからっていうだけではないことくらい、自分でもわかっている。
賑わう教室や廊下とは別世界にいるような、静寂な空間。
俺の鼓動が響いちゃうんじゃないかって心配になってくる。
…しょーくんはどうなんだろう。
さっきまでは、俺をグイグイ引っ張りながらここまで走り抜けてきた姿がカッコ良かった。
今は何だかホッとしたような表情をしていて。
頬がね、ちょっと赤くなってんのが可愛い。
それに…
しょーくん、俺の手首をつかんだままでいるんだよね。
たぶん気づいていないんだと思う。
だから、しょーくんに“手”って伝えてみた。
そしたら謝りながら俺の手首をつかんでいた手を離していった。
さっきまであった温もりがなくなったのもあるけど、つかんだままでいてくれても良かったのにって思って…
いや、俺がしょーくんを離したくなくて。
俺は離れていったしょーくんの手を咄嗟につかんだんだ。
しょーくんはビックリしたみたいで
「智くん…?」
って瞳を揺らしている。
そんな表情を見たら、心に秘めていた想いが込み上げてきて、俺の胸は更に高鳴っていた。