第6章 四次試験の始まり
「………よかった。誰もいない」
昨日の今日で、川には誰もいなかった。私はチャンスだとばかりにひやりとした川の中に入った。
「もう臭わないかな? どうしよ……ハンゾーについてきてもらえば良かった!!!!」
私は服を着たまま、ジャブジャブと体を洗う。洗い続けていると、しばらくして誰が現れた。
「…………何をしてる?」
その男の人はわたしを見て、目を見開いた。私は腕をゴシゴシ洗いながら、
「体を洗ってるの」
と答えた。丁度いいや。この人に聞こう。
「ねぇ、私もう臭わない?」
「は?」
「私獣臭いって言われたの!! もう臭わない?」
5分ほど全身をくまなく洗ったので大丈夫だと思うが……聴いておいて損ということはないだろう。
「…………ここにいては分からん。こちらへ来い」
「うん!!」
私は川の流れに逆らって、その人のところへ行った。
「………………臭わん」
その人の言葉で私は目を輝かせた。
「よかった!! 上がろうっと。ありがとね」
私は川から上がった。私がいた所はびしょびしょになり、地面に黒いシミができる。私はそのまま立ち去ろうとした。
「……待て!!」
しかし、その人に止められた。私は何かと首を傾げる。お礼をしろとでもいうの?