第10章 天空闘技場
────────
「くくく♡」
部屋で一人、男は声を押し殺して笑っていた。それは余韻である。男の腕はかすかにつなぎ目があり、所々傷のような跡も見え、それが戦闘の激しさを物語っていた。だが、この男の場合、快楽を求めるあまりに自分から故意的に受けた傷でもあるのだが…。
このように、男はより強い相手を殺すことで、気持ちが高ぶる人種であった。そんな余韻を浸っている時、1本の電話がかかってきたのだった。
「ねぇ、聞いてるの?」
抑揚のない声で電話越しに聞こえる声。男は笑いながら彼に謝った。彼は溜息をつくが、これもいつもの事なのだろう。変わらぬ調子で問いた。
「それで、今どうなってるの?」
男は答えた。
「順調♦️ クロロも彼女を気に入った様子だったしね」
男の言葉に彼は相槌を打ち、先を促した。男は彼の要望通り続けた。
「再来月、大きな仕事があるんだ♦️その前に情報収集として、例の所に行くことになっているんだけど……キミはどうするんだい?♣️」
男は何気なく普段通りに、彼にそう聞いた。
「え?オレ?その日は、殺しの仕事が入ってるけど。………場所?詳しいことは言えないけど、そこから北に飛行艇で5時間ってところかな」
「ふーん♦️ じゃあ、仕事ほっぽり出して来ることなんて出来ないね」
「は?するわけないじゃん。大体、オレは母親たちみたいに過保護じゃないし」
男は彼の言葉に肩を竦めるような素振りを見せ、そして同時にほくそ笑んでいた。どうやら、男は彼が姿を見せないことにどこかホッとした様子だ。男は言った。
「そう♦️ じゃあ、キミの分まで目を光らせておくよ♣️ じゃあ、またね」
そして電話を切る男。そして、再び笑った。
「イルミは来ない♡ アルミだけ♦️ さらには、周りに彼女が頼る人もいない♣️これだけお膳立てされて……ヤらないわけにはいかないよね♡くくくくく」
男は数刻前までこのベッドに座っていた彼女へと、思いを馳せた。
「……あぁ…♡ 本当に勿体ない♡ イルミの元で鍛えていたなら……きっと良い殺し屋になっていただろうに……♡ でも……それもまた……いいね♡」
その時抱きしめた感触、輝く群青色の瞳、交わした言葉…男が頭の中で呼び起こす度に、男は色っぽいため息を零した。彼女に関わる要素全てが………男の興奮の源であった。