第2章 家出する一個下の弟
弟と家を飛び出して1週間が経った。何もあてもなく飛び出した私たちだったが、とりあえずハンター試験というものに参加することにした。とある街で見聞きしたハンター試験に興味を示したキルは、いい遊び相手が見つかった時のような顔をしていた。そして今、私たちはそれがある会場を探しているところだ。
「はぁ!? その街ってここからチョー離れてるんじゃん!!!! 」
案内人?とやらの課題で、100人倒しするキルを眺めるのももう疲れてきた頃だった。ようやく終わったようだ。少々遊びすぎるのがキルの悪いところなのだ。
「お疲れ様キル」
「こんなの準備運動にもならないっての。ってか、アル姉ー!! ここから会場まで結構な距離あるんだぜ!!!! もう俺バスやら電車やらに乗りたくねぇよ!!!!!!」
両手足をバタバタとさせるキル。ふむ。鍛えられた肉体を持つ彼ら100人を持ってしても、キルの退屈遊びすらもならなかったようだ。これならもっとお金を持ってくればよかったかなと思った。
まぁ、仕方が無いだろう。抜け出す準備をしている途中の段階で、ミル兄と母様に見つかり、リュックをそのまま持ってきただけなのだ。その時少しのお菓子しか持っていけないと知りイラついたキルが二人を刺し、少ない荷物と両ポケットに詰め込められたお菓子だけで家を出た私たち。
「……仕方ないか」
この家出がいつまで続くかは分からないが、こうなったキルはテコでもバスや電車で行くと言ったら動こうとはしないだろう。なるべく節約しなければいけないのだろうが、私も初外出に心が動きっぱなし+弟には甘い性分であるので、しょうがないなと笑った。
「じゃあ、飛行船で行こうか。飛びっきり速いやつ!!」
「まじで!? やった!!!! 俺、アレに乗ってみたかったんだよなぁ!!!!!!」
不機嫌そうな顔から一変、にっこり笑顔になったキル。この顔には母様たちも弱いんだよなぁと苦笑いする私だった。