第2章 家出する一個下の弟
街一番速い飛行船で着いた街は、さらに賑わいを見せていた。こんなに人を見たのは初めてだったので私はドキドキしっぱなしだ。
「ハンター試験の会場はーっと!!」
キルは慣れた様子で辺りを見渡していた。
「この辺のはずなんだけどなぁー」
弟だけに探させるわけにはいかない。夢中になりそうになった私はハッとして、キルに合わせて探し始めた。私は彼よりも身長が高いので、探しやすいだろう。
「あっ!! キルキル!! あれじゃない??」
試験と言うからにはきっと大きな会場なのだろう。私は特別高い建物を指さした。
「……んー?おっ!あった!!それそれ!!」
キルがウキウキとした足取りで、そちらへと向かう。私も彼のあとを着いて行った。
「…………ん???」
目の前に現れたのは一件の定食屋さんだった。キルはなんの疑いもなくそこへと入っていく。もしかして試験の前の腹ごしらえ?
「何ぼーっとしてんだよ。ほら行くぞアル姉!!!!」
キルに手を引かれ定食屋に入った。あまり家では香ることのない匂いが鼻の中に入ってきて、それと同時にお腹も空いてきた。
「いらっしゃい。何にします?」
執事たちに食べたいものを言うのとは訳が違う。私はキルに任せることにした。それにしても、こんがりお肉がとても美味しそう。
「……焼き方は?」
「弱火でじっくり」
「…奥の部屋へどうぞ」
案内された部屋ではお肉が焼いてあった。
「わぁ!! キル美味しそうだよ!!食べよ!! これこのままたべていいの??」
はしゃぐ私を見て呆れた顔のキル。
「アル姉、まさか俺が肉を食うためにこんなところに来たって思ってんの?」
「…? 違うの?」
キルは大袈裟に頭を振り、ニヤッと笑った。
「ここがハンター試験の会場なんだって」
「…………えーーー!?」
私の驚きの叫びと同時に、部屋がガクンっと下がっていくのを感じたのでした。