第5章 三次試験と奇術師
試験が始まってから、軽快だったヒソカの足がぴたっと止まった。後ろを歩いていた私は、その背中に声をかけた。
「どうかした?」
「………なんかいるねぇ」
こういうことは試験中、何度かあった。彼があると言えば、必ず何かあるのだ。とすれば、この先にあるのは課題…。あと何回すればゴールなのだろう?
「私はどうするべき?」
一応今回も彼に問いかけた。
「臨機応変に♡」
「分かった」
私がそういうのを満足そうに見て、そしてヒソカは跳ね開きの扉を力いっぱい押した。
「待ってたぞヒソカ…」
そこにいたのは、傷だらけの顔をした男の人だった。どうやらヒソカの知り合いのようだ。
「誰だっけ?」
しかし、ヒソカは男の人に見覚えがないらしくキョトンとしている。人違いじゃないとまで言っている。
「ヒソカって言ってるんだから、人違いってことはないと思うよ」
私は苦笑いしながら言った。男の人はヒソカの言葉にわなわなと震えていた。
「お前にやられたこの傷!! 今日のために俺は死ぬほど特訓したのだ!!!!」
そして、両手に持っていた大きなナイフを投げてきた。クルクルとナイフは円を描きながらヒソカへと向かっていく。ヒソカはナイフをなんなく避けたので、ナイフは私の横を通り過ぎて、男の人の手の中へと戻っていった。
「なんだ♦️特訓したわりには大したことないね♣」
そのヒソカの言葉に男の人は鼻で笑った。
「これはまだ序の口だ!!!!」