第5章 三次試験と奇術師
第三次試験会場トリックタワー。そこに足を踏み入れた私は、その異様な光景に少し驚いた。正直どんな所か何が待っているかすら分からない。
「あ…そう言えば、これ誰のだろ?」
私は誰かの上着を持った。クラピカでもレオリオでも無かった。キルやゴンにしては大きいし………。というか、私いつ寝たんだっけ…??
まさか病気ではないだろうかととても不安だったが、そこで私の思考は中断した。
「生きて下まで降りてくる事、制限時間は72時間です」
72時間……3日か。
「ここ3日かかるほど高いのかな?」
「そうとも限らない。どんな罠が待ち受けているのか分からないからな」
クラピカが用心しろよと言うので、私は頷いた。
「わっ、あの人壁をつたって降りて行くよ!」
「マジかよ」
ふと後方でゴンとキルアの話し声が聞こえた。塔の端に駆け寄ってく彼らに、
「キル、ゴン。危ないからあまり身を乗り出したらダメだよ」
と私も駆け寄って声をかけた。手すりがないからヒヤヒヤする。
「大丈夫だって!! へぇー結構スイスイいくものだな。簡単なのか?」
「んー?どうだろ??」
興味津々の2人に私はため息をついて、そしてあることに気づいた。
「………人面鳥だ……」
そういえば、あの一次試験の時も人面鳥がいた。ということはおこぼれを狙っているわけで他の動物が………あ、いた。大きな鳥。
「崖をつたって降りるのは止めた方がいいかもね。ここあの鳥の巣があるみたいだよ」
「げっ!?まじかよ!!ってことはあのオッサン、あの怪鳥の餌になるってわけ?うわー…ご愁傷さまだな」
キルが嫌そうに舌を突き出した。ゴンはキルの言葉を聞くと、身を乗り出した。
「おじさーん!!そのまま行ったら珍獣に食べられちゃうよー!!もどってきなよー!!!!」
ゴンはそう呼びかけるが、
「戻ると思う?」
「戻るわけねぇじゃん。人の言う事大人しく聞くようなら、まずハンター試験なんて受けないだろ」
私もキルと同感だった。そして、ゴンの声も虚しく、悲痛な断末魔が響き渡った。