第5章 三次試験と奇術師
夢を見た。小さい頃の夢。
私は執事に連れられて、外に遊びに行っていた。私にとって初めての外だった。その時から母様に外遊びを禁じられていた私は、それを破ることに怖がりながらも楽しんでいた。そんな夢。
「…………アル」
そんな中、そろそろ暗くなるという所で、誰かが私を呼ぶのが聞こえた。
「誰?」
辺りを見渡しても誰もいない。気のせいか?そう思ったが、私の手を引いていた執事は驚いた顔をしたのを覚えている。きっと、家の人に見つかって、怒られると思ったのだろう。慌てて私の手を強く引っ張った。
「…………あ」
私は声を漏らした。黒い大きな何かに執事が覆われたからだ。私はそれと同時に寝てしまった。幼かったからかもしれない。暗くなると眠くなるものだ。
「アルちゃん!!!!!!」
次に目を開けた時、私は母様に抱きしめられていた。よく分からなかったが、父様やお爺様も私の頭を撫でてくれたので、とても嬉しかった。
………なぜ今更こんな昔の夢を見たのだろう?よく分からないが、とても懐かしかった。