第5章 三次試験と奇術師
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「……キミ、ギタラクルのこと好きなの?」
冗談で聞いたのだが、意外にも彼女は頷いた。
「へー。ギタラクルって言うんだあの人。カタカタカタカタしか音出さないから、カタカタさんって呼んでたんだけど、やっぱり失礼だったよね」
………なるほど。これが家から出さなかった理由か…。僕は納得した。家族を介していない他人が、どれだけ危険か彼女は知らない。つまりは、他人の悪意を感じる必要が今までなかったのだ。だから、僕がどれだけ殺気をこめても彼女には届かないし、それらに対して身を守ることができない。
「……………く……くくくくく」
「ヒソカ?」
僕は思わず膝を抱え、顔を手で包んだ。もし僕がここでこの子に手を出したら、イルミはどうするのだろう。別に構わないというのだろうか?それともその崩れることのない顔が、少しは面白くなるのだろうか。どちらにしろ家族から何も言われてないイルミは、何もしない。だったら……ここで殺してしまっても………
「ヒソカ!!ヒソカってば!!」
ハッと顔を上げたとき、気づけば彼女の顔がすぐ側にあった。
「血が出てるよ!! どっか痛いの??」
興奮しすぎて顔に爪をたててしまったようだ。アルミが心配そうに僕の顔を触って、傷を確かめる。ふわっとほのかな香りが鼻をかすめた。少し湿っている髪が僕の膝にかかる。綺麗な白い肌、細い首、張り付いたシャツ……。
「ヒソカ? 大丈夫?」
まだ幼い顔立ち、無垢な目、何もかもが綺麗すぎる。
………あぁ、グッチャグチャに壊してみたい……♡
彼女に手を伸ばした。彼女の肩が揺れる。あと少し…あと少し……
カタカタカタカタカタカタ
その時、鋭い殺気を感じ僕の手は止まった。
「………早いね」