第4章 二次試験へ
「……へー!! 綺麗じゃない。これ上流の魚よね。あんた料理の知識は少しあるようじゃない!! そっちのハゲよりマシだといいけど」
そう言って、私の料理を口に入れた。固唾を飲んでそれを見守った。
「………………」
なんかよく分からない顔だ。ブハラがあまりにも静かなメンチに聞いた。
「どう?メン……」
「普通」
グサッ。私の胸に何かが刺さった。
「色々考えてはあるけど、本当に普通。そもそも調味料に頼っている時点でダメね。ありのままの食材で勝負する気がなくちゃ話にならないわ。なんと言っても、しゃりが柔らかすぎ。噛みごたえが無いのよね。まぁ、このハゲより大分マシだけど」
グサグサグサグサッ!!!!
「っていうか、この普通すぎる味。なんか覚えがあるのよね。あんたの師は誰よ」
「え……と、先生は確か……美食家の資格を持っていらっしゃって……」
そこまで言うと、やっぱりというような顔をした。
「それ私の同僚だわ。あいつ金持ちの家に雇われたとか言ってたけど。なるほどね、いいように金だけ貰って楽しくやってるわけか!! かーーーっ!!!!」
グチグチと先生の悪口を言うメンチ。………何かあったんだろうか…
「失格」
バッサリと切り捨てられ、私はヨロヨロと片膝をついた。こんなにも胸が痛いなんて…。いやまだだ。言われたことを改善してまた出せば………
「味付けも飾り付けも1から出直してらっしゃい!! これじゃあ、微塵の価値もないわよ!! あー!!久々にイラつくものを食べたわ。そこのハゲもよ!!」
グサグサグサグサ。あ…もうだめだ。とどめを刺されてしまい、私は倒れ込んだ。
「な………スシってのは、そんなもんだろーがよ!!!!」
この後の発言で、受験者全員にスシの全容が伝わってしまったのは言うまでもない。