第10章 天空闘技場
「久しぶりって、つい一ヶ月くらい前に会ったばかりだよ」
私は笑って、イル兄を見た。
「会ったと言っても、たった一分三十秒だ。それは会ったとは言わないでしょ」
「変装していた時、結構会ってたように思うけど?」
こう言うと、イル兄はんーと考え込んだ。
「まぁ、そうだね。お前、随分オレに懐いてて、驚いたよ」
…………本当は、彼の生態系について興味があっただけであって、別に変装したイル兄自身に興味があった訳じゃないんだけど…………キレられそうだから言わないどこ。
「それで、まず聞きたいのはこの人どうしたの? 記憶違いじゃなかったら、昨日私が落とした人だと思うんだけど……」
ちらりと彼を見ると、驚愕したような…懇願するような目を私に向けていた。
「そいつ、お前のこと付けてたんだよ。気づいてなかった?」
「そうなの?」
ふーん。気づかなかったな
「だから、殺すけどいいよね?」
「あ……い、嫌だ。頼む……たすけ……」
私はその人を見た。恥をかかせた私に何か仕返しがしたかったのだろうか?まぁ、確かにちょっとやりすぎた感はある。
「んー。別に私なんともないし、何も殺さなくてもいいんじゃない? それにイル兄に迷惑かけてないでしょ?」
この人、ただ付けてただけだよと、私は弁護した。その人は大きく何度も頷いた。
「ふーん」
イル兄はそう言うと、針をしまった。
「お…お嬢ちゃん、ありがとうありがとう!!!!」
その人はヨロヨロと立ち上がり、私の手を取ろうとした。
「あ」
ブスッ!!
その前にその人は頭に棘が刺さり、倒れた。
「殺すんだ」
「当たり前だろ?」