第10章 天空闘技場
キルの番号が呼ばれ、私は頑張れと言った。すると、キルは、
「何で姉貴が緊張してんだよ」
と呆れた。
「ゴンに大丈夫だって言っておいて、姉貴が緊張してんじゃん」
笑うキル。いやいや!!キルが強いことなんて知ってるし、心配いらないことも分かってるし…なんと言っても私が緊張しても仕方がないことも承知してる。それでも、しちゃうのはしょうがないじゃない!!
「すぐ戻って来る」
そう言って、キルは鼻歌交じりでリングへと上がった。試合が始まる…。私が固唾を飲んで見守っていると、
「お嬢ちゃん…ねぇ、お嬢ちゃん」
隣に座っていた男の人が私に声をかけてきた。
「君、さっきの子たちの付き添いかい? 強いねぇ」
あ、キルの対戦相手…キルに何か言ってる………こんなガキに当たるなんて…俺も運がいい……?
「また馬鹿にして…!!」
「おっと!?」
………ん?あっ、そういえば話しかけられてたんだった。何の用だろう?早めに終わらせて欲しいんだけど
「元気がいいんだね。おじさん、元気がいい子は好きだよ」
「そうですか……っ!?」
どうやら試合が始まったようだ。ドダドダと対戦相手が怒りの表情を見せ、キルに迫る。
「………でさ、もし良かったら……って聞いてる?」
グイッと手を握られ、私は無理矢理男の人の方に向かされた。
「……あの……」
いきなり何をするのか、そう言いかけた時、
「おじさん、アルミになんか用?」
男の人の手をギリッと握ったのは、ゴンだった。ゴンは怪我はないらしく、試合前と変わらなかった。
「あ、ゴン。お疲れ様」
「うん。アルミ、行こう」
「え? 」
ゴンが私の手を取ったが、男の人が空いた私の手を掴んだ。
「まちなって。おじさんは君のお姉さんと話していた最中だったんだ。邪魔は野暮ってもんだ。分かるだろ?坊ちゃん」
話しって……一人で喋っていただけじゃん。