第8章 帰宅と秘密
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「……発動条件?」
ネテロは眉を潜めた。それこそ彼女のお爺さんが、知りたがっていたことだったからだ。アルミは頷いた。
「ええ。この呪いは、私がある条件を満たした時に発動するんです。そして、それが発動したが最後、ゾルディック家の名は消えることになります」
淡々と話す彼女だったが、その拳は痛々しくも握りしめられていた。
「………その発動条件…とは?」
ネテロはそう尋ねると、彼女は一瞬言葉を躊躇ったように見えた。しかし、思い切ったように口を開くと、
「………私が子を成したときです」
と言った。
「…………なるほど…な」
ゾルディック家に相応しい報いとは、よく言ったものだ。人を殺すのを生業としてきた一族が、身内によってその幕を閉じるのだから。
「さらに、彼は言いました。だけど、その呪いには穴があるのだと」
「……穴?」
「はい。簡単な話で、家を出て、ゾルディック家と今後一切の繋がりを切るんです。そして、出会った男性と恋をして、子を生む。そうすれば、そうすれば、助かるそうです。勿論、その男性もお腹の子も死ぬことはありません。ただゾルディック家の人々が死ぬだけのだと」
「………………」
ネテロは言葉を失った。恐らく、彼は長年見てきた彼女に情が湧いたのだろう。だが、復讐はしたい。だから、彼女だけ助かる道を作った。だが…それは何ともおぞましいものだった。
「…………これを今まで言わなかったのは、家族に言えばその時点で呪いが発動すると言われたからです。だから………誰にも言えなかった…」
アルミは唇を噛み締めて、俯いた。涙こそ出すことは無かったが、彼女のその痛々しい姿にネテロは何も言うことが出来なかった。
「私はそうするつもりはありません。しかしここでは、女は20歳までに子を作らねばならないという決まりがあるんです。彼もそれを承知の上でこの呪いをかけたのでしょう。ですから、お願いがあるのです」