第8章 帰宅と秘密
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「…驚くべきこと」
ネテロは呟いた。彼女が話していることは、恐らく彼女に呪いをかけた執事の身の上話。今から呪いをかける相手に恨み言を言おうというのか…。たかが、3歳の子供相手に…彼は、一体どういう気持ちでそんな話をしたのだろうか。
「実は、愛人だったのは本妻の方で、母親の身を案じた父親が代役をたて、周りを欺いていたんです。父親はまだ幼い姉を引き取り、お腹にいた息子と母親には会わないようにした。これが結末なんです。
そして、お分かりのようにそれを知った息子は、復讐の鬼と化し、彼らを暗殺したゾルディックに潜入。息子は執事自身だったのだと知ったのは、兄から話を聞いた時でした」
アルミは悲しそうに笑った。ネテロはそんな彼女を見て、自分も窓の外を見た。
「彼がそこまで話し終えたとき、私は彼に聞いたんです。どうしたら、その息子は幸せになれるのかと。恐らく、話している時、いつも笑顔の彼が悲しそうな顔をしてたからでしょう。すると、彼は一瞬驚き、そして拳を握りしめ、もう遅いんだと呟きました。その後です。私を連れ出したのは」
アルミはネテロを見た。その顔から、話の核心をつく部分が近づいてきたことがわかる。
「私の手を引きながら、彼は言いました。復讐に燃えた息子は、家族を殺した犯人の家族を皆殺しにするまで止まれないのだと。幼い子供だろうが、産まれたばかりの子供だろうが関係ない、当然の報いなのだと。
しばらくして、彼は私の手を離し、そして、彼は言いました。それは呪いの発動条件であると同時に、悪夢の始まりでもありました」