第8章 帰宅と秘密
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彼女は口を開く。
「これから話すことは、私はもちろん、家族の命も関わることです。秘密にすると約束していただけるでしょうか?」
その言葉にネテロは一瞬考え、そして頷いた。彼女は彼女なりに意図があって、自分に話すのだろうと。アルミはそれを見て、息を静かに吐いた。そして、遠い日を見るかのように窓の外を見た。
「私を外へと連れ出す前、彼は昔話をしてくれました。とある家の息子の話です。
ごく普通に暮らしていた息子は、ふと自分の父親が違う人だと気付きました。その人と母親は既に終わっていましたが、聞けずにいた息子は、父親を自分で探し始めました。そして、彼は見つけたのです。記憶にない父親を。父親は有名な企業家で名を馳せたやり手でした。
しかし、その父親には既に妻子がいました。自分の兄と姉に当たる人がおり、彼女達もまた有名な人たちでした。噂には、彼は昔から女癖が悪く、子供などの話は聞かないものの、1人や2人いたとしてもおかしくなかったと。息子は激怒しましたが、母親には何も言うことが出来ず、彼は忘れることにしました。
ある日のことです。一つの知らせが彼の耳に届きました。彼の父親が殺されたのです。しかも、一家惨殺という形で。急いで家に帰った息子は、驚きの光景を目にしました。母親もまた部屋の真ん中で死んでいたのです。
彼は呆然としました。母親の葬儀中、これは父親の事件と関係がある…そう確信していました。
そして、彼は当時仕えていたという秘書と出会いました。そこで彼は、驚くべきことを耳にしたのです」