第7章 memories
僕は何も自慢出来ることがなかった。
いつだって自信がなくて
自己主張もできなくて
本当に情けない。
でも、彼女に会って、話して、変わった。
誰かと話すことが恐くなくなった訳じゃないけど
彼女は裏表がなくて信じることができた。
裏表がないって分かったのは
今まで人目を気にして人間観察をよくしていたせい。
最初は明るい彼女が素敵だなと思って
彼女を思い出して絵を描いたことがあった。
その絵でコンクール優勝をした。
その絵は校内にも飾られ
もしかしたら彼女も見るかなって思って
少し気恥ずかしいかったけど嬉しかった。
同じバンドが好きで更に話すきっかけが増え
嬉しかった。
バンド以外の彼女の好きなものも知りたいと思った。
だから思い切って告白した。
今までだったら、こんな勇気は出せなかった。
でも彼女に出会って自分が描く絵画だって色鮮やかになった。
告白を受け入れてもらった時は
本当に嬉しすぎて信じられなくて固まってしまって彼女に大笑いされた。
でも、嬉しかったんだ本当に。
僕も椿さんが好きだから。
でも、付き合ってすぐに彼女の元気がなかった。
こんな日もあるだろうと思ったけど
かなり重症みたいで溜息ばかりついてる。
もしかして無理して付き合ってくれてるのかなとも思った。
でも、そうじゃなくて
その原因は黒尾くんだった。
彼はバレー部の主将で僕とは正反対のような存在。
でも
そんな彼にでも椿さんだけは譲ることが出来なくて
正面からぶつかっていった。
それでやっと椿と一緒になれたのに
彼女と話す話題はバンドのこと。
その話が終われば話題は無くなって
わざわざ話題を彼女が作ってくれた。
でもその話はほとんどが黒尾くんの事だった。
もう1人年下の子の話もしてるけど
6割は黒尾くんとの話。
せっかく作ってくれた話題なのに、
ヤキモチを妬いてしまう。
僕と話してる時の笑顔ですら、黒尾くんに負けてるんだ。
彼と話してる時の方が何十倍も輝いてる。
どうしたって敵わない。
きっと僕はこの人の彼氏には向いてないんだ。