第10章 coffee
先輩の卒業式は
もう遠い昔の話
今は私が受験生で
志望校に受かるため死に物狂いで勉強した
私の今の原動力は
"夢"だ
私にはなりたいものがあるその為に
苦手な数学IIIだって必要になってくるし
物理や化学も必要で
いくら時間があっても足りないくらい
もちろん寝てなんかいられない
ガコンッ
だからこうやって
コーヒーを飲む
勉強のためと思って
飲み始めたコーヒー
先輩が飲んでいたものと同じ
そのコーヒーは思っていたより苦くて
ラテなんかとは比べものにならなかった
時々だけどまだ
菅原先輩のことを思い出す
まだ未練があるのかもしれない
いや、未練なんて無いといいなー
なんて自分で言って苦笑してしまう
「あれ?河野?」
後ろから声をかけられた
顔はまだ見えない
でも分かる
この声は私が恋い焦がれて仕方がなかった
貴方の声
「……菅原先輩?」
時々卒業生が先生に会いに来たりしてたなぁ
あとは部活に顔を出したり
菅原先輩はどっちだろう
そんな疑問を持ちながらぼーとしてたら
先輩が
私の右手にあったコーヒーに気づいて
「お、河野もそれ飲むの?」
大人になったな〜
それ結構苦いだろ!!!
そう言ってまたいらずらっ子のように笑う先輩を見て
私も笑った
「もう大人なんで飲めますよ!」
先輩への未練が残っているかもしれない。
そう思っていたけれど
大丈夫
もう赤面することも
胸が苦しくなることもない
また少しだけ話して
私は教室へ向かった
教室について
さっき買ったコーヒーを飲む
やっぱりそのコーヒーは苦い
あまりにも苦かったコーヒーに
私は思わず顔をしかめた。
"大丈夫"