第7章 memories
これほど時間が長く感じたことはなくて
「「………… 。」」
何も言えないままお互いの目を見つめ合う
いつの間にか椿は泣き止んでいて、
不思議と、その無言に嫌な気はしなかった。
なあ、
もしかしたら。なんて、期待させんなよ。
「………ごめん。好きな人がいるから‥」
わかってた。けど、
どんな言葉を返すべきかまでは頭が回らねえんだ。
だから、その代わりに
また泣き出しそうな椿の頭をぽんっと軽く撫でた。
撫でると同時に椿は泣き始めた。
泣かせたかったわけじゃねえんだ。
なあ、
頼むよ。
「泣くな。椿。」
一向に泣き止まない椿を家まで送った。
「じゃあ、また明日な。」
「………ぅん。」
俯いたまま、目が合うことはなかった。
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次の日の学校は想像以上につまらなくて、
授業中も窓の外をみながらボケーっとしてた。
放課後は部活がある。
掃除を終えたらすぐ向かおうと思ってた
だけど、向かう途中に掃除中の谷原を見つけた。
教室には入らず、
開かれた状態のドアに体重を預け
「お前椿と付き合うのか。」
「………そのつもりです。まだ、返事は貰ってないですけど。」
「あっそっ。んじゃ上手くやれよ。」
それだけ行って帰ろうと思い谷原に背を向けた。
「……何なんですか。昨日はあんなに言ってたくせに。」
「…………しょうがねえだろ。椿が選んだのはお前なんだから、」
決して振り返らず背を向けたまま答えた。
「………… 。」
「ただ、お前が泣かせたら今度は俺が奪う。」
最後にそれだけ言い残して
俺はさっさと部活に向かった。
せめて情けない姿を見せまいと思ったが
これじゃあ、負け犬の遠吠えみてえじゃねえか。