第15章 ・牛島兄妹、双子と邂逅 その3
フィールドでスタートの表示が弾ける。上部からいくつか固まったブロックが降りてくる。
宮侑対牛島文緒のパズルゲーム対決が始まった。
文緒は苦戦していた。
「あっ、そっちじゃないのにっ。」
ただでさえ慣れないアーケードゲーム筐体のレバー、しかもこれは文緒の手だと結構力が必要で微調整がやりにくい。開始からずっと降りてくるブロックを左右に動かそうとしたつもりで高速落下させてしまう、を繰り返していた。
「速攻勝負がつきそうやな。」
「これは仕方ありませんね。」
ニヤリとする侑に対し文緒はふぅと息をつく。
「おっしゃ連鎖出来た、点火ーっ。」
あっという間に文緒のフィールドを妨害のブロックが埋め尽くした。
「ああっ。」
「まずは1本目ー。」
「仕方ないのはわかっていても悔しいです。」
「2本先取やからな、まぁ次頑張りやぁ。」
悔しそうな文緒、カラカラ笑う侑の後ろでは若利と宮治が見守っている。
「嫁、全然怖い事ないんですけど。」
「まだ嫁じゃない。」
「それ他でも言うてはるんですか。」
「よく言われるからな。」
「そういう問題やろか。」
「いずれにせよそのうちわかる。」
「ふーん。」
そんな微妙なボケ突っ込みのやり取りの間に、文緒対侑の勝負2本目が始まった。
「えいっ。」
文緒は気合を入れているが先程よりは落ち着いて操作している。が、慎重にやっている分積み込み速度は家でやっている時より遅め、やはり侑の方が先制攻撃をしかける。
「おっさきー。」
侑のフィールドから軽快にブロックが消えていく音が響く。文緒は必死で慣れないレバーをぐいぐいやってはボタンをばしばし叩いてブロックを回転させている。
「勝負あったな。」
後ろで見ていた治が呟くも若利はいや、と否定した。
「まだわからない。」
「えらい嫁持ち上げますね。」
「まだ嫁じゃない。」
その間に侑のフィールドの連鎖が終了、文緒はまだ連鎖を組んでいる。今操作している一手がフィールドに着地したら即刻大量の妨害ブロックで埋め尽くされて敗北決定だ。
だがしかし、ただで終わる牛島文緒ではなかった。