第15章 ・牛島兄妹、双子と邂逅 その3
東京の某所にあるゲームセンター、牛島若利が再三警告したにもかかわらず宮兄弟は"おもろいから"という理由で結局文緒を希望したゲーム筐体まで連れて行ってくれた。
「これは」
文緒は筐体のコントローラー部分を見つめる。ごっついレバーに平ぺったいボタン、文緒としては戸惑いがある。
何せ操作経験があるのはPCのキーボードか家庭用ゲーム機のパッド、たまにスマホ、おまけにこいつは実の両親が存命中こっそりやっていたという事情でPCのキーボード操作歴の方が長いという若干ずれた経歴の持ち主だ。
「とても難しそうです。パソコンのキーボードでばかりやってますから。」
「大丈夫やって、気にせんと楽しんだらええねん。」
「信用したらアカンで自分、こいつ性悪やから。」
「おい先入観の植え付けやめろ、クソサムっ。」
「事実やん。」
「俺は潔白や。」
「潔白てどの口が抜かす。」
「何言うてんねん、どう見ても紙のごとく真っ白やろ。ホワイトペーパーや。」
「ホワイトペーパーは意味が違ってくるのではないか。」
日本語で言う所の白書であり、企業が出す報告書もホワイトペーパーというのは確かではあるが問題はそこではない。
「兄様、問題はそこではないかと。」
義兄のズレた指摘に文緒も突っ込みを入れるが双子は首を傾げた。
「サム、今のわかるか。」
「わからん。」
「役に立たんやっちゃな。」
「うっさいわ、それやったらさっさと目の前の板で調べろやダボ。」
「何やと。」
外で"ダボ"というまともではない言い回しはやめていただきたいものだが生憎今それを突っ込める人材もいない。
そのまま双子は戦闘態勢に入りそうな雰囲気、文緒は察して口を挟む。
「それより、誰から始めましょうか。」
「あ、俺俺。俺先に文緒ちゃんとやりたい。」
打って変わってにっこりと笑う侑に治がうへぇと言いたげにため息をつく。
「ええっスよね、牛島君。」
「好きにするといい。だが後は知らない。」
「ほな文緒ちゃん、やろかー。」
「はい。」
言って文緒は財布を取り出し、自分で小銭を入れようとしていたのだが侑が素早く横入りして先に入れてしまう。
「恐れ入ります。」
「ええってええって。ほなよろしくー。」
「まったく慣れていないのでお手柔らかにお願いします。」