第15章 ・牛島兄妹、双子と邂逅 その3
「やっと出来たっ。」
操作している一手をはめ込んで今度は文緒のフィールドのブロックが連続で消えていく。
「お、やるやん。」
余裕を崩さず侑は追撃の準備、文緒はブロックが消えるアニメーションが終わるまでの間に次の一手を考える。ここはしのげても侑からの追撃で潰される事など考えていない。
「おとなしい顔して負けず嫌いやなぁ。」
侑は画面とコントローラーに集中する文緒をチラと見てニコニコしていたが
「ぎゃあああああっ。」
次の瞬間、彼は思い切り叫んだ。何かとやかましいゲームセンターの中でも目立ったのか通りすがりの何人かが見ている。
ゲーム筐体の画面、侑のフィールドには大量の妨害ブロックが降り注いでいた。
「ちょ、今何したんっ。」
えいっと控えめな気合を入れながら追撃の準備をしていた文緒はチラと侑を見返して微笑む。
「ただの3連鎖です。」
「嘘つけやっ。」
叫ぶ侑にこればかりは仕方がなかったのか治がうんと同意した。
「どう見てもただの3連鎖ちゃうよな、2連鎖目と3連鎖目に何ぼほど消しとった。」
「操作ミスで重ねていたのをたくさん巻き込んで行ったのでどうなんでしょう。」
その会話の間にゲーム筐体の画面ではブロックがぎゅうぎゅうに詰まってしまった侑側のフィールドの底が抜け、ゲームオーバーの表示が踊った。
「良かった、間に合って。これで1対1ですね。」
「嘘やろおっ。」
信じられないと言わんばかりに頭を抱えて騒ぐ侑、治の方も若干顔色が悪くなっている。
「ツムの攻撃相殺した上におつりふらして潰しよった。」
「少し操作に慣れてきたか。」
一方若利は泰然としていた。
「いやおかしいですって」
治が即突っ込む。
「嫁さっきパソのキーボードでばっかりやってる言うてましたやん、何でこんな速攻で慣れるんですか。」
「以前家でチームの連中とゲーム機のパッドでやった時も慣れていないなどと言いつつこんな具合だった。」
「実は夜中にこっそりゲーセン通い」
「同じ寝床にいる、それはない。」
「今何て。」
さらりと新たな爆弾発言をされた治が聞き返すも若利が答える前に3本目の勝負が始まろうとしていた。
「さっきは手加減してたけど思(おも)たよりやられたからな、ちょっと本気出したるわ。」
「光栄です。」