第14章 ・牛島兄妹、双子と邂逅 その2
「どうした。」
若利は尋ねるも答えは当然返ってこない。あまりの破壊力にさしもの双子も突っ込みすら出来ないくらい硬直していた。
「やっぱりこうなっちゃった。」
文緒は義兄の横でもう、と顔を両手で覆うしかなかったという。
しばらくして宮兄弟は復帰し、4人はファーストフード店を出た。
何とはなしにそのまま彼らは一緒に歩いていたのだが明らかに宮兄弟が文緒を何度も見てくる。
「あの、」
もう4度目位のところで文緒は双子の方を見返した。
「私、何か妙な格好になっているんでしょうか。」
露出の低い格好をしているし気をつけているので下着がはみ出してるなどはないと思いたいが油断は出来ない。
「いや、それはない。」
サムの方が答える。
「ないんやけど」
「はい。」
「牛島君がもう嫁もろてるって思わんくて。」
「嫁ではありません。」
勿論、義兄じゃあるまいし"まだ"とは言わない。
「やでも」
ここでツムの方が面白がって言う。
「牛島君はその気まんまんですよねー。」
「いずれは。」
真面目に答えてしまう義兄はどうしようもなく、双子はウヒョーと無駄に高揚する。
「聞いたかサム。」
「おう聞いたでツム。」
「愛されとるな、文緒ちゃん。」
「冷遇されていないのはご覧のとおりです。」
「ちゅうか最初から妹やのうてそのつもりで引き取ってもろたんちゃうんか。」
「私にはわかりません。」
少なくとも今は妹である。例え学校で多くの連中にロリ嫁と認識されていたとしてもだ。
「そうだとしてもそうじゃないとしても関係はない。」
しばらく黙っていた若利が口を開いた。
「俺が気に入った。血の繋がりも極薄くて問題がないなら願ったり叶ったりだ。」
「あの、若利兄様」
おおおおと言いたげに若利を凝視する双子、正直もうお話にならないでくださいと文緒は言いたい心境だ。
「めっちゃ凄い土産話出来たぞ。」
「せやな。けどツム、北さんの前ではでけんぞ。」
「あーっ、せやなー。北さん絶対与太話やめぇ言うて怒る。」
「与太やないんやけどな。」
「する時は北さんおらんトコで。」
「やな。」
主将さんのことかなと文緒は思う。このどこか食えない兄弟が一目置いている様子からして只者ではないのだろう。いや、そういう問題ではない。