第14章 ・牛島兄妹、双子と邂逅 その2
わいわい騒ぐ双子に文緒は思わずふふと笑ってしまった。
「仲がよろしいんですね。」
双子は同時にムキッと文緒に向き直って同時に叫んだ。
「ようないっ。」
文緒はまたふふと笑う。きっと喧嘩するほど仲がいいというものだろうと思った。
少々失礼な事は言われた事は置いておいて、この2人からは何か深い絆を感じる。彼らのバレーボールでの様子を文緒は知らないがきっとその絆とは無関係ではないだろう。
「牛島君、妹ちゃんがおちょくってくるねんけど。」
ムスーとしてツムの方が言うと若利は特に顔を変えずに首を傾げる。
「文緒は思ったままを口にしただけだ。」
「あかん、この兄貴あかん。」
「おいツム、今思(おも)たけどもしかしてこの2人天然兄妹ちがうか。」
「あっ、それやっ。」
勝手に納得する双子に義兄妹は同時に眉根を寄せた。
「違う。」
「違います。」
見事に重なった混声合唱に双子は吹き出す。
「天然は兄です。」
「それは文緒だ。」
更にでかいのと年齢不詳の華奢なのとが同時にお互いを指さしている図はなかなかのものがある。
「あら何て事、兄様はこの話になると本当に頑固で困ります。」
「それはお前の方だ、瀬見どころか青城の岩泉にも言われていただろう。挙句の果てに烏野の、あれは誰だったか。どうにも覚えられない。」
「縁下さんですね、いい加減覚えてあげてください、とてもお世話になったのに失礼です。それに同じことは兄様も言われていますよ。」
「納得がいかない。」
「帰ってからチームの皆さんにお聞きになっては。それこそまず瀬見さんが突っ込まれるでしょうけど。」
「否定するまでの話だが。」
「あら何て事。」
「ああああああ、もうっ。」
一連の兄妹の会話をしばらくあっけにとられて見つめていた宮兄弟だがここでとうとうツムの方がしびれを切らしたように声を上げた。
「うっさいねんっ、とにかくどっちも天然やっ。」
「似たもん夫婦やな。」
「いけません、それは」
サムの方がズズーとジュースの最後の一口をすすりながら口にした言葉に文緒は慌てる。
これは一番まずいパターンだ。だがしかしもう遅かった。
「まだ嫁じゃない。」
今までに数々の相手を轟沈させた若利の一言、勿論宮兄弟も無事では済まなかった。