第14章 ・牛島兄妹、双子と邂逅 その2
文緒はこの時何となく食えない雰囲気の宮兄弟がどう反応するのかさり気なく注視していたのだが何と宮兄弟はまたも同時に目を丸くした。さしもの彼らも理解が追いつかなかったのか。
「意味わからんのですけど。」
ボソリとサムの方が呟くと若利は淡々と答える。
「身寄りのなくなった他所の娘を母親が引き取ってきた。」
「え、ちゅうことは」
ツムの方が言った所で若利は無自覚に大打撃を繰り出した。
「義理の妹だ。」
「でええええええええっ。」
途端に宮兄弟はまた叫んで今度は椅子からずり落ちた。
文緒は一連の事態に対し義兄に突っ込みもせず静観していたが、いい加減にしないと4人共お店からつまみ出されそうだと思っている。
「正確には遠い親戚だから血の繋がりもなくはないが」
あたふたと這い上がって座り直す宮兄弟に何か突っ込むでもなくなおも淡々と若利は話を続ける。
「遠すぎて他人と言っても差し支えはない。」
「なるほど、どーりで」
ひくひくしながらツムの方が言った。
「全然顔がちゃうと思(おも)た。」
「誰もが言う。無理もない。」
「せやけど」
ここでサムの方が呟く。
「遠い遠い言うても親戚なんやろな。」
「そうでしょうか。」
文緒は大分少なくなってきた甘味をさらえながら努めて平静に言った。さっきはツムの方かと思えば今度はサムの方が覗き込んできている。
「雰囲気が、何か似とる。」
「意外です。大抵の方は兎にも角にも顔が似ていない事をおっしゃいますが。」
それより兄妹揃って大抵の奴に天然扱いを受けている事に言及するべきと思われるが瀬見も岩泉も縁下もいないので誰も突っ込めない。
「や、何か」
一方サムは口元に指を当てて随分と真面目な様子で言った。
「牛島君程やないけど、呑気な嬢ちゃんの顔して女王様ちゅうか。」
気がつけばツムの方も相方に賛同しているかのように何とも言えない笑みで文緒を見ている。
またも無言の攻防だ。
「初めて言われた気がします。」
文緒は甘味を食べ終わった匙を傍らに置いて微笑んだ。
「誰も気ぃつかんかったんか、それともよう言わんかったんか。」
「まぁ大抵の奴はツムよりデリカシーあるやろ。」
「お前さっきから何やねんっ、自分かてロリ連呼してちゃうって怒られとった癖にっ。」