第8章 ・不思議な8月13日
「すげっ、何かすげぇなっ。」
「そうでしょうか。」
「でもそれであのウシワカの妹って何か災難だな。」
「何かと話の種にされてしまうのは確かです。おまけに他校の知らない方に声をかけられることも増えてしまって。兄は私が人目を惹くからだと言うのですが何か違う気がします。」
「ロリ趣味の目は惹くんじゃねーの。」
「まぁ何てこと。あ、これにしようかな。」
「タオルか。」
「前にも贈った事があるんですがよく使うものですし、実際擦り切れてきているのがあったので。」
「こっちの柄がいーんじゃね、ウシワカだし。」
「あら良いですね。」
そうやってしばらく照島と何やかんや話しながら文緒は会計を済ませるまでに至った。
話しながらだったとは言え実際はそんなに時間をかけず文緒は照島と一緒に戻った。
「すみません、主将さんをお借りしてしまって。」
微笑む年齢不詳に条善寺の野郎共はお、おう、とぎこちなく返事をするばかりである。
「照島さんも本当にありがとうございました。」
「おー気をつけて帰れよー。」
「重ね重ねありがとうございます。では失礼します。」
照島が何故か上機嫌で手を振り条善寺の野郎共がぽかんとする中文緒はその場を去った。
「何でウシワカ妹に付き合ったんだよ。」
文緒の姿が見えなくなってから母畑が照島に尋ねる。
「別にぃ、」
照島は答えた。
「前の借りを返したかったからよ。」
何だそりゃと苦笑する仲間に照島はだってと呟く。
「ロリにやられっぱなしってムカつくじゃん。」
「あんまそんな風に見えねぇけど。」
二岐にニヤニヤしながら言われて照島はうっせぇなぁと返した。
何も知らない文緒は義兄がいないうちに無事に帰宅する。危うい所だったと急いで照島に付き合ってもらって買ったタオルを義兄に渡す準備をしていた。照島達に遭遇するというまさかの事態はあったが結果的に良かったとも思う。そうでなければもうちょっと品を選ぶのに時間がかかっていただろう。ありがたい話だ、後は義兄が戻るのを待つだけである。
だがしかし義母、義祖母と夕食にしている間も若利はまだ帰ってこない。少々落ち着かないものを感じながら文緒は義兄を待ったのだった。