第5章 ・片仮名語
そういう訳で次の日の朝から勝負は始まっていた。
「文緒ちゃん、おはよー。」
「あら天童さん、おはようございます。」
白鳥沢学園高校の廊下で天童覚と牛島文緒が挨拶をしている。はたから見ればこの辺は普通だ。
「いつも練習お疲れ様です。」
「ありがと。やー今日も鍛冶クンに怒られちったよ。」
「またふざけられたのでは。」
「文緒ちゃん最近ちょいちょい失敬だね。ま、必殺技考えよーとして失敗したんだけどさ。」
「それは鷲匠先生でなくとも注意されるのでは。」
「このロリ。って、あーっ。」
「まずは私の一勝ですね。」
くっそーと悔しがる天童を他所に文緒はにっこり笑ってポテポテと1-4の教室に向かった。
続いて第二ラウンドである。
「あれ文緒ちゃんめっずらしー、購買行くのん。」
「今日は妙に食が進みまして、物足りないんです。」
「太るよーって言いたいとこだけど文緒ちゃんの場合はちっと太っても平気だよね。」
「あら何て事。他の女の子なら怒られてますよ。」
「そだよねー、普通の子はダイエットに必死、あ。」
「必要以上に食べなさすぎるのは食事療法と言えない気もしますが。」
「そ、そーね。」
ぐぬぬとなる天童に対し文緒はやはり微笑んで購買へ向かった。
「という訳で今んとこ文緒が2勝0敗です。」
放課後、五色がせんでもいい報告をしている。
「そうか。」
対する主将は愛する義妹が阿呆な事に関わっているにもかかわらず何も突っ込まない。その側では天童がむきーっと叫んでいる。
「でもまだまだだからネ。俺はしつこいよん。」
「努力の方向音痴という奴ですねっ。」
「工に変な事教えたの誰さ。」
「その手の言葉は大抵お前が発信源じゃね。」
「英太君もバッサリ斬り捨ててくれるよね。」
「お前が文緒に妙な事ふっかけたら大抵俺も巻き込まれるからな。今回はまだあいつ駆け込んできたりしねーけど。」
「瀬見さん苦労してますね。」
「言うな川西。」
「好きで首突っ込んでる癖に。」
「白布、お前ホントかぁーいくねーな。」
「どうも。」
「まあとりあえず天童は頑張れや。」
「さんきゅね、隼人クン。」
「何でもいいからみんな早く着替えような。」
とうとう大平がため息をついたところで話は一旦キリがつく。