第5章 ・片仮名語
「若利クーン、」
その日天童覚は唐突に言った。唐突じゃない日があるかどうかは置いておこう。
「俺3日ほど文緒ちゃんとは片仮名使わずに会話するからよろしくねん。」
「そうか。」
「待て若利普通に返事すな何かおかしい。」
そのまま受け入れようとする主将に慌てて突っ込みを入れる瀬見、すぐさま天童に向き直る。
「何だってそんな流れになったんだよ。」
「いやこないだテレビで片仮名語使ったら罰金みたいなコーナーやってたのが面白くてさ、文緒ちゃんとやったらどうかなって思いついただけダヨ。」
「思いつくなそして実行に移すな。」
「だって文緒ちゃんてさ、片仮名弱い訳じゃないのになーんか古臭かったりするじゃん。だったら片仮名語使わないで喋れんじゃないかなぁって。」
「阿呆だろお前。」
「てかよ、」
ここで山形が口を挟んだ。
「よくあの嫁が受けたな。」
天童はそれねとニヤリとする。
「勝負しないって誘ったら乗ってくれた。」
「いくら文緒が売られた喧嘩買うタイプっつってもそんな程度でやすやすと乗るか。」
「勿論最初はお断りされたけどね、自信ないのって一言添えたら一発。」
「あの馬鹿嫁。」
白布が舌打ちして
「文緒さんが乗りやすいのか天童さんが乗せ上手なのか。」
川西が呟くときた。
「頑張ってください天童さん、俺だったらソッコー負けますんで。」
「でかい声で言う事か。」
無駄にフンッと力んでいる五色に呆れた瀬見が突っ込んでいる後ろでは大平がこめかみに汗を浮かべつつも微笑んで見守っている。
「何だかんだ言って天童も文緒さんを気に入っているんだろうな。」
「仲良き事は良い事だ。」
この時こちらには誰も突っ込む余裕がなかった為若利は無駄に重々しく頷いた。