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君と私と(非)日常

第1章 総統のいたずら


「うーん……やっぱ苛めたいじゃん、好きな子ってさ」
予想だにしなかった言葉に振り返って見ると、王馬くんはいつの間に私の枕を引き寄せてそれを我が物顔で使っていた。
『え、うそ………本当?。』
枕のことも気になるけど、それよりもさっきの問題発言の方が先だ。
身を乗り出して王馬くんの顔を覗き込む。
「…………」
珍しくキリッとした真面目な表情で見つめ返してきた。
『お、王馬くん……私のことどう思ってるって?。』
「……好きだよ。お付き合いを前提に結婚しよう」
手を私の頬に伸ばしてそっと撫でてきた。
『え……何これ…………本気……?。』
「希灯ちゃんはオレのこと……好き?」
王馬くんの紫色の瞳がうるうるしている。
これ……もしかして本心なの………?!。
『……す、好き………かも、しれない……。』
いや待てよ、まだ自分の気持ちはよく分からないんだ。だからこんな無責任なこと言うべきじゃない。
……とは思うものの、顔はどんどん熱くなるし心拍数も明らかに増えてるからどうにも勘違いが止まらなかった。
辿々しい返事を聞くと、王馬くんは優しくクスッと笑いおもむろに添えていた手で…………私の頬を思い切りつねった。
『いッ、痛い痛い痛い!。千切れる!。』
「あーっはっはっはっは! 嘘に決まってんじゃーん!! こんなので騙されるとか、希灯ちゃんの頭はゴン太レベルだね!」
つねった手を咄嗟に掴んだけど、簡単に振りほどかれた。
見事に逃げられ、パタパタと軽い足音が個室の出口へ駆けていく。
「まあまあつまらなくない反応が見れたから今日はこれで帰ってあげるよ。じゃーねー!」
まさにイタズラに成功した子供のような無邪気な笑顔で退散してしまった。
私は呆気に取られてしばらく彼の出て行ったドアを見つめることしか出来なかった。
『…………。』
つねられた頬を擦る。まだ痛みは引いていなかった。
王馬くんは爪が伸びてたから食い込み方がさぞやえげつなかっただろう。
インターホンが鳴ってから今しがたの退散までの一連の王馬くんの言動を何となく振り返る。
生意気で他人を困らせて喜ぶ姿がとても憎たらしかった。
……でも、何でだろう。
あの真面目な顔と声とほんのり浮き立つ緊張感のなかで言われた言葉ばかりが、やけに誇張気味に反芻される。
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