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君と私と(非)日常

第6章 画面越しの片想い


《ゴン太はね、虫さんとお話しが出来るんだよ!》
彼は表情豊かに喋っている。
感情を表に出している所を見たことがなかった私は勿論動揺した。
それに……今の彼には、私の知っている聡明なイメージが欠片もない。
言うなれば、頭に花畑の生えたクソバカ野郎に成り果ててしまっている。
図書館で委員会の仕事を全うしているときに見掛けた彼はとても賢そうで、黙って座っているだけでも絵になるような人だった。
だけど今彼が持っているのは分厚い参考書でも綺麗に書き留められたノートでもない。小さなプラスチックの虫かごだけだ。
裸足で虫かご背負って、どういうつもりだ。
ふざけるな。彼が握るべきなのは、タモではなくてペンなのだ。
私は許さない。彼をこんな脳みその溶けきった野生児に仕立て上げたチームダンガンロンパを絶対に許さない!。
密かに抱いていた恋心だって、彼がこの殺し合いで死んだらそれで終わりじゃないか!。
何で落選させなかったんだ!。会社の電話対応締切時間ギリギリに電話かけて三時間はクレームの言葉で粘ってやる……!。
ダンガンロンパそのものを恨みながら、それでも画面に食い入る。
画面の中の彼はとても明るく、朗らかだった。
いつも他人のために、なんなら自らを盾にして守ろうと行動したりする姿があった。
『何よ……。現実の彼の方がもっと素敵なんだから……。こんな森で育ったゴリラなんかじゃないんだから………!。』
悔しげに様子を見つめる。
こんなの間違ってる!。可愛いだなんて少ししか思ってないんだから!。私はそう簡単になびいたりしないよ!。
『あ……終わっちゃった……。』
夜時間になったようで、放送もここで一時終了したみたいだ。
画面には次回に向けての料金の説明が映し出される。
テレビ放送なら一定額をどこかへ振り込めばいいらしい。
スマホなら専用のカードを購入し、そのコードを入力して1話ずつ払う仕組みになっているようだ。
登録は思ったより簡単そうに見える。
それにスマホなら持ち運んでいつでも何処でも見れるわけだ。
普段だったら「それがどうした」で済ますところだけど、今回は片想い中の彼が参加しているわけだ。
いつ死ぬかもわからない番組に出ていたら気が気じゃないし、見ても見なくてもきっとソワソワすることには変わりないだろう。
例え中身が別人だったとしても、せめて最後まで見届けたい。
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