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君と私と(非)日常

第6章 画面越しの片想い


リモコンでテレビの電源を入れると、真っ黒だった画面に大人気番組のダンガンロンパが映った。
少年少女に人殺しをさせる悪趣味な番組だ。
一瞬何かのドラマかと思ったが、どうにも役者や編集には出せない生々しさがあった。
まだ今シーズンの一番最初の放送らしい。53作も続く超長寿企画番組だけれど、視聴する人の種類はかなり片寄っている。
大体は残酷な映像見たさや、極限の状態に追い詰められた人間模様を観察したい人がこの放送に金をかけ、配信をひたすら見るのだ。
初回に関しては誰でも視聴可能で、次回から有料になる。
まずは「出演者」に興味が持てるかどうかで決められるように最初を無料にしたらしい。
画面の中では高校生達が戸惑い果てた様子で動き回っていた。
募集で集められ自らの望み通り参加したのに、それを忘れさせられてあたかも「理不尽に殺人ゲームに参加させられた」という状況を作り出している。
16人の憐れな子供達。
その中には、私の学校の同級生も居た。
「獄原ゴン太」という名前で参加している人物に目が留まる。
彼の本名は……何だったかな。
私とはクラスが違ったから名前はよく知らないけれど、あの巨躯はよく目立つもので、廊下や図書館などでよく見かけていた。
性格は真面目・堅物で冗談にも笑わないタイプ……っていうのが顔見知り程度の見解だ。
成績はかなり優秀で、まさに文武両道を極めていた。進学先も多くの人から期待され、彼の将来は私のような平均値には想像も出来ない高みにあった。
そんな彼が、こんな殺し合いをするためだけの娯楽番組に出ている。
見る奴も出る奴もトチ狂っている、あのダンガンロンパだ。
出演応募する奴は、ダンガンロンパが大好きで、ダンガンロンパのキャラクターのように人殺しがしたいがために僅か16枠を勝ち取ろうとする。
現役の高校生しか募集してないから、特に卒業を控えた学生は躍起になったりするらしい。
彼らにとっての「憧れ」であるダンガンロンパに、たとえ死ぬのだとしても出られただけで名誉ということなんだろうか……。
私には理解できない。
好きなものの為に、見せ物になる為に、わざわざ命を差し出すなんてどうしても理解できない。
しかも名前や記憶、果ては性格や生い立ちまで全てを塗り替えられ、全くの別人として参加するんだ。
彼だってそうだ。
本来の彼を知る人物なら誰もが驚くだろう。
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