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君と私と(非)日常

第6章 画面越しの片想い


明日行く学校にも、どうせもう彼は居ないのだから……それならいっそ、ダンガンロンパの一部になってしまった彼を見ていた方がいいのだ。

翌朝、私はコンビニで端末用電子マネーのカードを買ってから学校に向かった。
コードを入力し、ダンガンロンパを視聴するアプリをインストールする。
現実世界とリンクさせたリアルタイムでの放送はもう既に始まっていた。
一夜明けたわけだが、彼は無事に朝を迎えられているのだろうか。
画面には食堂らしい風景が映っていた。
複数人の男女が画面に現れる。
ちゃんと16人揃っているようだ。
ホッと安堵の溜め息を吐いた。
「おい……昨日のやつ見たか?」
「あぁ、あれって確か学年1位のアイツだろ?」
「特待生クラスに居たっけ……何であんなゲームに参加してるんだろうな」
「周りの大人が学業だの進学だのってしつこいから、自暴自棄になったんじゃねーの?」
ふいに教室からそんな会話が聞こえた。
やはり皆気になるらしい。
何人も机や鞄の影に隠してスマホを見ている。
殺人ゲームに興味はなくても、身近な人間が巻き込まれたということで心配からか好奇心からかで様子を見る人も多いようだ。
朝礼の為に教師が教室に足早に入ってくる。
混乱を避けるためか、私たち生徒には彼の話はしなかった。それでも朝の男子たちの会話と教師の青ざめた顔を見れば大体の人が察しが付くわけだ。
彼は今本当に、電脳世界のフィクションの存在になっているのだ。
薄々ただの他人の空似であればと願っていたが、それは叶わなかったらしい。
その日は隙あらばスマホで放送を確認し、下校中も帰ってからもずっと見入っていた。
その次の日も、また次の日も。
彼が犠牲にならないことを祈りながら日々を送る。
いつの間にかダンガンロンパが私生活の中心になりつつあった。
あれだけ毛嫌いしていた……勿論今も彼を危険な状況に晒しているチームダンガンロンパが憎くてたまらないが、こうして私はお金を払って視聴を続けているのだ。
かなり滑稽なことだろう。
でも私は見なければならない。
彼が生き残るのを確認しなければならない。
彼が死んだことを確かめなければならない。
ゴン太として生きる彼を……私は愛して応援したいのだ。
どんなに気持ちを募らせても彼には絶対に届かないのだが、このまま諦めて忘れてしまうのよりかはその方がずっと私にとってはいいのだ。



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