第2章 はい、アーン。
連れてこられたのはキーボくんの個室だった。
「お茶の時間を邪魔してスミマセン……!」
部屋についたら落ち着いたのか、第一声と共に頭を下げる。
『いや、別にいいよ。お茶もお菓子も後で片付けに行けばいいし。それにここなら落ち着いてお喋りできるでしょ。』
「……そ、そうですね。ではもう少しここで休んでいってください」
とりあえず座ってまた話をすることにした。
「あ……あの、さっきのことなんですが」
『ん?。何のこと?。』
「先ほどの他人から口に食べ物を入れてもらう行為なんですが……」
キーボくんが摘まんで運ぶ仕草を真似してみせた。
『あぁ、あれね。もしかして嫌だった……?。』
「いえ、違うんです! そうじゃなくて……あれは漫画で見たことがあります。女性が好きな男性に対してよくやる愛情表現ですよね。それで希灯さんがボクに好意を寄せてくれているんだって思うと嬉しくて……勘違いだったらすみません」
恥ずかしそうにキーボくんがもじもじと説明する。
何となくでやったことだけど、キーボくんの言葉を聞いて私まで恥ずかしくなった。
『……大丈夫、勘違いじゃないよ。』
「やっぱりそうでしたか……。ありがとうございます」
私の返答で安心したらしく、キーボくんはホッとしたような顔になった。
「でもせっかくの気持ちを受け取れないのはとても残念なことです。さっきのあれは食べさせる人と食べる人がいてやっと成立するものだと思うので…………ボクはロボットなので食べる側にはなれないんですよね……」
しょんぼりと肩を落とすキーボくん。
『逆は……?。』
「いいえ、ボクが食べさせる側でも良いですけど……出来れば先ほどのように「希灯さんからもらう」というのをボクにも可能なカタチで達成したいんです」
なるほどね。
キーボくんはまず愛情を与えられる立場になりたいわけか。
どんな方法がいいかな……。
『ねぇ、キーボくんはどうやって燃料を補充してるの?。オイルとかガスとか乾電池?。』
「電気です。ボクはコンセントにコードを繋いで充電しています」
キーボくんはコードを出してプラグを見せた。
『よし来た。ちょっとそれ貸して。』
まずはコンセントを見つけてプラグを差し込む。
もう片方の端を持ってキーボくんの体に向けた。
『……キーボくんの差し込み口はどこにあるの?。』
見たところそれらしき穴はない。