• テキストサイズ

君と私と(非)日常

第2章 はい、アーン。


「……そうだ。この前図書館の書物に「誰かと一緒に食べれば美味しさが増す」と書いてありました。希灯さん、先ほどは1人でしたが今ならボクも居るので、今食べたらもしかしたら記述通り美味しさが増すかもしれません」
落ち込んだ私に気を使ってか、そんなことを提案してくれた。
『そうだねぇ……。1人で黙々と食べるよりは誰かとお喋りしながらの方が楽しいし、きっと美味しく感じられるかも。』
クラッカーを1つ摘まみあげた。
ツヤツヤの苺ジャムと蜂蜜のかかったものだ。
『キーボくんも、私たちみたいに食べ物で動力を補充出来たらもっといいだろうね。』
冗談のつもりでキーボくんの口元にクラッカーを運ぶ。
『はい、アーン……。』
「あーん……」
キーボくんのものとは違う声がした直後、私の持っていたクラッカーは口の中へ消えた。
と言っても、キーボくんが食べてくれた訳じゃない。彼は今突然現れた人物の行動に驚愕している最中だ。
「んー……絶品だね! キー坊が食べられないのが可哀想になるくらい美味しいよ!」
割って入ってクラッカーを横取りしたのは王馬くんだった。
「……まぁ、嘘なんだけどね。せいぜいマーガリンも乗せた方がいいっていう助言しか浮かばないくらい平凡な味がしたよ」
『市販のクラッカーとジャムだからね。』
平凡なのはしょうがない。寧ろ手作りだったら食べる気も起きないものが出来上がるから平凡の方がマシだ。
「ぐぬぬ……王馬くん! キミはまたそうやってボクの出来ないことをネタにしてからかって……そんなにボクが悔しがる姿が見たいんですか!?」
既に悔しそうな顔のキーボくんが王馬くんに叱責した。
「ロボットのくせに悔しがる機能なんてついてるんだねー。科学のチカラってスゲー!」
相手が怒っても尚おどけて対応する王馬くん。
付き合いきれないと思ったのか、キーボくんは立ち上がって私の手を掴むと中庭に続くドアへ歩き出した。
「場所を変えましょう。王馬くんの来れない所へ移動しますよ!」
『ちょっ……キーボくん………!。』
手を引かれるままに席を立つ。
「ははっ、お熱い仲だねー」
王馬くんの囃し立てる声を聞いて、キーボくんが顔を真っ赤にした。
怒りからなのか、照れからなのか。本人もよく分かっていないようだった。




/ 203ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp