第2章 はい、アーン。
この才囚学園という閉鎖空間に閉じ込められて一体何日経ったことだろうか。
一体何人減ったことだろうか。
毎日集まる食堂も、少しずつ寂しさを募らせていった。
「こんにちは、希灯さん」
後ろから掛けられた声に振り返る。
時間は15時を過ぎた辺りだった。
集まるのは朝だけだから、私を呼んだ人物はそもそも食堂には用はないはずだ。
それでもここに来るということは、きっと私に会いに来たんだろう。
『ちわー、キーボくん。』
手をひらひら振って応える。
目が合うとキーボくんはニコッと笑って近づいてきた。
「隣に座ってもいいですか?」
『いいよー。どうぞどうぞ。』
横の椅子を引いて招く。
会釈しながらいそいそと座るキーボくん。
私は自分の座る椅子の向きをほんの少しキーボくんの方へ動かした。
コロシアイによって人数が減るのは悲しいけれど、その分関わる人数が限られてくるから親密になりやすい。
私の場合はその相手がキーボくんだった。
だからこうして、何もない時間帯を2人で過ごす機会が段々と増えてきている。
きっと、キーボくんが今一番好きなのは私だ。
それに私もキーボくんのことを学園メンバーの中で一番気に入っている。
お互いに好意を持って接するこの時間はなかなか悪くないものだった。
「何を食べているんですか?」
テーブルの上の菓子類を指差した。
『これはね、クラッカーの上にジャムを乗せたおやつだよ。あとはミルクティー。』
ここの食堂は色んな物がある。小麦粉だってお肉だってナンプラーだって、何だってある。
でも料理経験の少ない私にはレシピもろくに分からず、仕方がないから見つけたクラッカーやフルーツジャムで簡易なお菓子を作って済ませていた。
『斬美ちゃんが生きてたらもっと美味しいものが食べられただろうになぁ。せめて料理のコツとか教えてもらいたかった……。』
「そうですね……東条さんのご飯は誰もが喜んで食べていましたから、いなくなってしまったのは大きな損失と言えます」
損得勘定で判断するべきじゃないけど、キーボくんの言葉には同感だった。
冷凍食品やレトルトでも御飯はどうにか出来上がるし自己流の粗末な菓子でもまあ不味くはないけど、やっぱり彼女の腕前と比べたら完全にゴミだ。
今では懐かしくなってしまった斬美ちゃんの料理の味を思い出し、独りでに溜め息が出た。