第2章 アドルフ・ラインハルト
「(ちょっとローザ…近すぎない?)」
「(大丈夫でしょ、むこうも気にしてなさそうだし)」
勉強でもしていたのかと思ったら
机にはノートの一つも出てはいなく
彼は頬杖をついたまま
ずっと外を眺めていた
”イケメンだから”
そう言われたら何も返す言葉は見つからないが
それだけではなく
なぜか引き込まれるものがあった
というか顔なんて前髪とマフラーで
ほとんど隠れて見えないし…
ただ…なんとなく
寂しそうに見えた…というか。
その時、彼がふっとこちらに視線をうつした
薄いグリーンの瞳
痛々しく顔に残る
火傷の跡
「…!?」
私は一瞬でわかった
「…アドルフ…くん?」
彼は少しきょとんとした顔で
ペコッと頭を下げた
「え、ちょ?知り合いなの?」
「ううん!そういうわけじゃないんだけど…
昔ちょっと…ね」
ローザには私が施設の出だということは
話していない
ローザは両親もいて
家族もいて
本当に一般的な家庭の子だから
話して気を使わせるのも嫌だし…
特に話す必要性も感じなかった
「アドルフくん…私のこと
覚えて…ない、よね?」
あれから何年もたっているし
あんな幼い時の出来事
覚えてるわけないよね
そう思いながら聞いて見たが
やっぱり彼は覚えてはいないようだった
「えーと…ごめん。
前に会ったっけ?」
少し期待はしたが
そんなもんだよね
「昔ね、あの…施設で
アドルフくんに助けてもらったことがあって
ずっとお礼したかったんだけど
あれ以来会えなくてさ…
あ、ほら!ハンカチ!
あの時ハンカチ借りたんだけど
返したくて…」
「施設…?」
彼はそれだけ呟いて
少し考えたあと
ハッとした顔で私を見つめると
いきなり腕を掴まれ図書館から出た
「え?」
「え!まっ…ー!?」