第3章 それは偽りの愛でした
あれから何日たっただろう
アドルフさんが
ローザさんと話をするって言った日から
話し合いはどうなったのだろう
またもや連絡先を聞きそびれた私は
アドルフさんと会えずじまいでいた
あれからローザさんも姿を見せなくなった
「…先輩…やっぱり…だめなんですかね…」
の事情を知っている先輩は
資料に目を通しながら困り顔で聞いていた
「待ってる、なんて言ったけど…
私にそんな権利ないですもんね…
散々不倫してるローザさんのこと
非難しといて…
私のやってることも同じことだし…
はぁ…なんかもう…最低だ…」
私はめっきり自信をなくしていた
あれからなんの音沙汰もないのだから
不安になるのも当然だった
忙しい人なのはわかってる
けど…
こんな中途半端な状態でいるのは
私の精神衛生上よろしくない…
「、今は耐え時よ
つらいだろうけど…」
「先輩…」
『社内報でーす』
「はーい!ありがとうございます」
定期的に社内の全ての課に配られる社内報が届いた
社内で行った行事やイベント
様々なことが書かれている冊子だ
いつも休憩のあいまにパラパラ読む程度
なのだが
仕事が暇なこともあって
その場でページをめくっていく
「……え」
私はとあるページで手を止めた
書くことがなかったのか
ページを埋める為なのか
そこには仕事とは関係のない
社員たちとご家族の楽しそうな写真が
いくつも写っているページがあった
そのページの一箇所に
目を奪われる
「…アドルフさん…子ども…いたんだ…」
アドルフさんが子どもも抱きかかえ
隣には楽しそうに笑うローザさんの姿
"子どもが1歳になりました"
"宇宙開発部アドルフ・ラインハルトさんのご家族"
と、紹介されている。
「そう、だよね…子どもいたって
おかしくないよね…
結婚…してるんだもんね…」
「ちょっと…大丈夫?
いやぁ…私も子どもいるとは知らなかったな…」
「大丈夫です…
ちょっとびっくりしてるだけですから」