第2章 アドルフ・ラインハルト
あれから数年がたち
私は施設を出てアルバイトをしながら
一人暮らしをし
学業に専念していた
あの時の男の子とは
あれ以来会うことはなかった
もちろん彼について知ってる大人を
探したり
色んな人から話を聞こうとしていたが
子どもをうまくはぐらかすかの様に
”ん〜誰のことかな?ここは似た様な子はいっぱいいるからね”
そんな返答しか返ってこなかった
もう一度会ってお礼がしたい
ハンカチも返したい
ただそれだけなのに
叶うこともなく月日だけが流れ…
私の記憶からも
だんだんと薄れかけていた
そして高校の最初の夏
夏休みが始まったが私は友達と図書館で
課題に取り組んでいた
「ねぇ」
「なぁにローザ」
「あの人…かっこよくない?」
「なによいきなり…どれ?」
「あの、1番奥のテーブルにいる金髪の…」
「んー?金髪?」
わりと広い図書館だが
夏休みだからか数人しかいない
図書館の1番奥のテーブルの
そのまた1番奥に座っていた
その金髪の男性は
夏だというのに長袖に
マフラーで顔の下半分を覆っていた
冷房の効いた部屋で
布団にくるまって眠る気持ち良さと同じで
確かに少し肌寒いほどの図書館で
長袖にマフラーは
実はちょうどいいのかもしれない…
そんなことをぼんやりと考えていると
ローザが再びきゃあきゃあ騒ぎ出した
「ね!声かけにいかない?」
「はぁ!?無理!無理無理!
私にはそんな度胸ない!」
「えぇー絶対イケメンだよあれは…」
「じゃあ話しかけなくても!
ちょっと近くに座るくらいにしようよぉ!」
「ま、それでいっか!
イケメン眺めながら勉強〜」
まったくローザってば…
そんなため息をつきつつ
私たちは彼の斜め前の位置まできた