第2章 アドルフ・ラインハルト
一瞬、何が起こったのだろうか
目の前がピカッと光ったかと思えば
私に爪を振りかざそうとしていた男の子は
どさっとその場に倒れこんだ
「…え、なに…?」
突然の眩い閃光のせいで
いまだに視界がはっきりしない私は
なにが起こったのかわからない
傍に倒れた男の子
息は…している…?
が、意識はなさそうだった
呆然とする私に誰かが声をかける
「大丈夫…?」
そこには私と同じ年くらいの子だろうか
金髪の男の子が立っていた
顔や体に多数の火傷のような跡…
「立てる?」
そう差し出された手を
私はボーッと見つめる
「…こいつはたぶん大丈夫だよ
そのうち目を覚ますよ」
そんな言葉はまったく耳に入らなくて
ただ、差し出された手の
痛々しさに
ただ、ただ目を奪われていた
そして気付いた時には
誰なのかもわからない
助けてくれたその男の子の手を握り締めながら
私は泣いた
「あなたも…っ
あなたも毎日痛い思いしてるんだよね…!
だってこんな、こんな痛そうな…っうっ…
私ばっかり何にもしてなくて
何にもわからなくて
ごめんなさい…」
今まで我慢していたものが
一気に溢れ出た
男の子は少し困ったような顔をしてから
ポケットからハンカチを取り出すと
私に差し出した
「はい、これ
”濡れると危ない”からさ…」
「…?…ありがとう…」
私はハンカチで涙を拭いた
「じゃあ、俺もう行かないと
そいつのことは報告しておくから
安心して」
「あ、まって!あの…
ハンカチ今度返すから…!
えと、名前は…?」
「アドルフ」
「アドルフ…
私は」
これが私とアドルフくんとの初めての出会いだった