第3章 それは偽りの愛でした
受付カウンターから少し離れたソファに
ローザさんは座っていた
「ローザさん」
「!!…アドくん…アドルフは!?」
「緊急の案件が入ってしまっているらしく
今は出れないそうで…」
「そう…ですか…」
ローザさんは肩を落としうなだれた
「今日の夜には帰るそうですよ
ローザさんに伝えてくれと
伝言を頼まれました」
「ほ、ほんとですか!?
…ありがとうございます
ご迷惑をおかけして…ほんとに
すみませんでした…
さんには
ほんとに…ご迷惑ばかり…」
「いえ、お気になさらず」
私は満面の笑みで微笑んだ
さっきまでアドルフさんに
抱きしめられていた体が熱い。
手の感触
唇の感触
全て残ってる。
もう、あなたは味わうことは
ないでしょう
ローザさん。
「では、私はこれで帰ります…
家で…アドルフの帰りを待ちます…」
「…ローザさん、お気をつけて」
入り口まで見送り
姿が見えなくなるまでその後ろ姿を見ていた
朝はあんなに晴れていたのに
気付けばどんよりと曇り空が広がっている
「雨、降りそうだなぁ」
私は受付に戻り仕事を再開した