第3章 それは偽りの愛でした
「アドルフさん…お繋ぎできない状況ということは
きっと緊急の用が入ってるのだと思います」
この受付カウンターには全ての部屋へと繋がる電話が備わっている。たいていの部署には繋がらない状況なんてものはないのだが…
特例で宇宙部門とその他一部の部署に限っては
あちらから一次通信拒否ボタンを押すと
こちらからは電話が一切かけられない設定になっている
国家機密、というやつが関係してるのだろうか
「こちらから電話でのお呼び出しが困難となっているので…
無謀かとは思いますが、私が直接アドルフさんの元まで伺ってみましょうか?」
それを聞いていた先輩が口を挟む
「それは無理よ。
私たちではあの階にすら入れないわよ」
「…確か、うちの部長は権限がありますよね?
最初の社内案内の時に直接連れて行ってもらいましたから」
「そうだけど…」
「お客様…いえ、ご家族の緊急事態ですから
私が部長にお話してきます!
ローザさん、少し待っていてください!」
大丈夫?私、笑えてる?
気丈に、振る舞えたかな
2人を会わせて
どうなるかなんて本当は全然わからないよ!
また…元のサヤに戻ってしまうかもしれない
こわいよ。本当は。
けど今は、2人は話し合う時間が必要なんだ。
私は、待つしかない。